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  コンセプト  

 『 TUMUGU SCHOOL 』 

 

 

TUMUGU SCHOOLは、セ・カ・イ(繊維・会館・一宮)建築チームが掲げる『一宮・名古屋・岐阜にかけて広がる濃尾平野・尾州地域の魅力を掘り起こし、建築・まち・アート・デザインを軸に様々な活動と連携を促す事』の活動の一環として企画しています。

 セ・カ・イ建築チームは、尾西繊維協会ビルで開催されたアールマテリアル・プロジェクト(以下、RRR※1)'2014にて、同ビルの建築的価値を再確認し、これを周知するため「勝手にオープンアーキテクチャー※2 尾西繊維協会ビル」を実施しました。また、秋のRRR'2014 A/Wでは一宮市内の近・現代建築 「墨会館(設計:丹下健三)」と「一宮市役所本庁舎(設計:県営繕課)」を取り上げ、”保存活用される建築”と”取り壊される建築”の両極の状況を展示し、当時存続が危ぶまれていた尾西繊維協会ビルの今後を考える「一宮の近代建築なう」を、そしてRRR'2015では存続が決まったこの建築の活用方法について意見を募った「ビル活っ!ワークショップ」を行いました。一方、'2014A/Wでは濃尾平野・尾州地域の連携を促す試みとして、なごや港まちづくり協議会※3から吉田有里氏と、岐阜市 柳ケ瀬サンデービルヂングマーケット※4の企画者 大前貴裕氏をゲストに迎えた「i.n.g(一宮・名古屋・岐阜)レクチャーシリーズ vol.01」を企画し、この地域で芽生え始めている新しい潮流について学ぶ機会を設けました。

 

今回のTUMUGU SCHOOLでは、日本のメディアアートを牽引する岐阜県大垣市のIAMAS(情報科学芸術大学院大学)に注目し、これに依拠した体験展示と、2010年から開催されている「あいちトリエンナーレ」について学ぶレクチャーを企画しました。これら2つの事象は、現在の濃尾平野・尾州地域の文化にも多大な影響を与えており、CMやMVなどの映像表現、デジタル技術を利用したファブリケーション※5、愛知県全域への現代美術の普及と歴史・文化の再発見など、国内のみならず海外へも大きく発信しています。

 

TUMUGU SCHOOLを通して濃尾平野・尾州地域の今を体験する事で、この地域の魅力と私たちの住むまちの財産を再発見できるような機会にしていただければ幸いです。

 

 

 

2015.07 セ・カ・イ(繊維・会館・一宮)建築チーム

 

※1:アールマテリアル・プロジェクト・・・Refind・Recreation・Relationをコンセプトに、再創作を行うことで価値の循環を図る事を目的とした活動。尾西繊維協会ビルでも過去3回開催。

※2:勝手にオープンアーキテクチャー・・・セ・カ・イ建築チームのメンバー 栗本が2013年から企画。町に埋もれた変わった建物を紹介する企画。過去「金山ピロティ住宅」や「M式水耕研究所」などを紹介。

※3:なごや港まちづくり協議会・・・「なごやとみ(ん)なとまち」をコンセプトに、住民と行政との協働によるまちづくり事業を行う。これからのまちについてみんなで考えるスクール「POTLUCK SCHOOL」など定期的に開催。

※4:柳ケ瀬サンデービルヂングマーケット・・・ぎふ・柳ケ瀬で毎月第3日曜日、まちを元気にする「手作り」と「こだわり」の詰まったライフマーケット。県内外から質の高いショップが出店し、全国的にも注目を集めている。

※5:ファブリケーション・・・製造・組立の事を指し、近年ではデジタルファブリケーションとして3Dプリンタやレーザーカッターなどを使った手軽なモノづくりを推進する技術の流れ。

 『 尾州からセカイへ 』 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一宮を中心とした毛織物の盛んな地域のことを尾州産地といい、国内だけでなく世界でもトップクラスの品質を誇る毛織物産地です。毛織物は綿や麻のような肌に直接身に着けるものとは異なり、上着などアウトウェアとして直接目に見える衣服が多い事からファッション分野との繋がりが深く、現在でも世界の名だたる服飾ブランドが尾州産の生地を使用しています。また、愛知県は自動車などの第2次産業でも大きな役割を果たしていると同時に、第1次産業である農業分野でも国内有数の規模を誇ります。これは、知多半島・渥美半島など温暖な気候に恵まれている地域や、”木曽三川”と呼ばれる木曽川・長良川・揖斐川の大きな河川が集まって形成された肥沃な土壌と大きく平坦に広がる濃尾平野など、農業に適した豊かな環境を持っていたことが理由として考えられます。

 

この「河川=水」による恩恵は、農業だけでなく繊維業にも多大な影響を及ぼしており、木曽川の清らかで豊富な水資源は奈良時代から麻・絹織物の産地としてこの地域を支え、時代によって変化を遂げながら尾州地域を一大毛織物産地へと変貌させていきました。

セ・カ・イ建築チームでは、このように地域の特徴・財産を活かすことで、ここでしかない魅力や地域性など様々な文化の形成に繋がると考えています。”木曽三川”の清流による恩恵を受けている尾州・濃尾平野一帯の事を、主要都市の頭文字をとって「i.n.g(一宮・名古屋・岐阜)※1」と呼び、地域の魅力を掘り起こしながら、市町村の枠組みを超えた地域連携を促す事を目的として活動しています。

※1:i.n.g・・・一宮・名古屋・岐阜の頭文字ですが、意味合いは濃尾平野一帯の市町村の事を指しており、都市の順番なども深い意味はありません。拠点が一宮で、語呂が良い理由のみです。

 『 尾西繊維協会ビル 』 

 

 

 

「尾西繊維協会ビル」は世界的な毛織物産地ビエラやプラトーと比較されるほど尾州の毛織物が隆盛を誇った昭和8年に、尾西織物同業組合事務所として建てられました。

 

その頃の一宮市内には近代的な建物は少なく、「名古屋銀行一宮支店(現一宮市西分庁舎、設計:鈴木禎次)」「一宮市役所本庁舎(現存せず、設計:県営繕課)」「国島商店ビル(現存せず、設計施工:清水組)」につづき、当時の最先端の建築技術によって建設されました。

 

外観は、濃い茶系のスクラッチタイルの外壁に白いコーナーストーンが縁取り、2層を繋ぐアーチ形状の縦長窓や、その間のヘリンボーン柄のタイルなど、繊維・服飾の意匠を思わせる豊かな表情が特徴です。また、低層階の開口部を縦長にし、階段を外壁からセットバックさせる事によって外観を整え、建築ボリューム全体の見え方をコントロールした重厚な佇まいも見所です。内観では、玄関廻りや3階会議室に残る細やかな装飾が、往時の華やいだ様子を感じさせてくれます。建築設備には、当時先端技術だった温水循環式暖房設備が設置されており、地下ボイラー室から温水を送ることによって全館を温める方式が取られていました。

 

尾州地域を大きく発展させ、日本の繊維産業の歴史を刻み込んだ街のシンボル「尾西繊維協会ビル」は、この地域の発展を願った先人たちが残してくれた、現在の貴重な財産として存在しています。

 

 

 

 

 

(2014.5.5 アールマテリアルプロジェクト 展示パネルより 一部修正)

 

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